3年生で水墨山水画に取り組みました。今回は制作の前半を紹介します。
「水墨山水画2014 3年生の授業」も2012「水墨画3年生の授業」と同じ展開です
前回と違うのは、半紙を継いで縦長(横長)の紙にしたこと。
テーマを風景に限定したこと。したがってタイトルは「水墨山水画」としています。
作品は墨を絵の具として使った水彩画という趣です。

まず水墨画という題材について
水墨画は絵自体が自然現象を取り込んだ絵画と考えます。「にじみ」「ぼかし」がつくる表情は、(墨と水と紙が生み出す)偶然の要素が混ざっているので、そのおもしろさは大人にとっても中学生にとっても非常に魅力的です。
けれど筆の使い方、筆の速度やタイミング。墨の量を水でコントロールすることなど、経験値による差が生じやすい。しかし、描く喜びやできあがっていく楽しさを体験させるのにこのうえない題材。さらに日本美術により親しみや興味を持たせる題材としても取り上げる意義があると思われます。
水墨画を単色の絵の具と考えれば、明度のみで彩度・色相が無いぶん、表現を明暗に集中できます。この点でも表現に対する苦手意識を弱め、描くことを楽しめる題材であると考えます。
次に指導について
まず水墨画の学びは臨画が基本。今回はお手本を風景写真としましたが、これも臨画と考えました。
山水画は作者の理想とする風景を写実的な表現を使いながらも想像で描く絵画。画中には草庵を描いたり、そこで暮らしている自分の姿を投影する。一方で見る側も作者に誘われて画中に入り込み、作者の世界観を味わう。
風景写真にも同じ作用があると思う。つまり写真家がカメラで切り取った世界を、見る側が写真家の追体験する。その風景に入り込んで見て、その感動を想像で描いてみる作業は山水画制作や鑑賞の感覚と近い。
自ら感動の風景を求めて各地に赴くわけではないが、写真集に凝縮している写真家の表現に触発されて、作品の持つ造形要素に触れてこれを描いてみようと心が動く。
「自分もこんな風景を描いてみたい」と思わせたら、写真をお手本にするのもありかもしれない。

「写真」をみることは、すなはち鑑賞活動であり、『B鑑賞(1)美術作品などの良さや美しさを感じ取り味わう活動(写真を選ぶ活動)を通して、鑑賞に関する次の事項を指導する。ア造形的な良さや美しさ、作者の心情や意図と創造的な表現の工夫、…を感じ取り味方を深め、幅広く味わう。』ことに通じると考える。
主題を生み出し、鑑賞の能力を育てる。指導のポイントだと思う。
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